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前回は、これまでに確認できた資料からいろいろと勝手に推測してみました。本当は今回に実車をレビューするつもりでしたが、出荷が遅れているようで、今回もまたプレビューすることとなってしまいました。そこで、今回はKawasakiの過去のマシーンと比較して、どこにデザイン上のルーツがあるかという企画でお話を進めていきます。 |
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と、いうわけで、前回の終わりのほうで、過去の車両との比較、特にXanthus(ザンザスと読みます。排気量400です。)との相似について語りました。
まずは、下の二枚の写真をご覧下さい。言うまでも無く、左がZ1000、右がXanthusです。雰囲気は実に似ているところがありますね。むしろどちらが未来的なスタイルか?と聞かれればXanthusと答える人が多いかもしれません。実は、この2台似ているといわれても、写真を並べて比較することは少ないのではないでしょうか? |
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こちらが話題のZ1000です |
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こちらはXanthusです。 |
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そこで、この2台、細部を比較していくと、コンセプトは同じスーパーネイキッド(というよりもむしろストリートファイター?)で似ているものの、デザイン上直接似ているところは少ないといえます。表面的に似ているところは、
- 水冷4気筒エンジン搭載。しかも共にスーパースポーツからの移植。ちなみにXanthusはZXR400という、当時の最新のレプリカ用エンジンでした。
- 車体右から見る限りは、片側2本出しのマフラ。でもXanthusはもちろん4本出しではないし、4-1-2というエキゾーストパイプの取り回しです。一方のZ1000は4-2-4という前代未聞のレイアウトです。ちなみにこのザンザスのマフラーは非常に重たいことで一部で有名でして、まことしやかにメインフレームよりも重いのでは?とまで言われていました。
- とがったテールカウルと、パイプのバーハンドル。
- ネイキッドとしては比較的軽量。ちなみにZ1000は198kg、Xanthusは168kgでした。さらにそれぞれベースとなった車両の車重はZX-9R(F型)で186kg、ZXR400(L型)で160kgでした。
- リヤが一本のサスペンション。
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Xanthus右後ろからの特徴的なスタイルです。 |
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といったところでしょうか?これ以外はデザイン上ではあまり似ているところはありません。ところがスペックを細かく読み解いていくと、意外な共通点に気が付きます。 |
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それでは細かく見ていきましょう!
- 非常に短いホイールベース。Z1000は1420mm、Xanthusは1380mm。実はこれらの数値は、エンジンのベースとなったそれぞれZX-9R(1415mm)、ZXR400の1385mmに非常に近いもので、Xanthusに至っては、逆に短くなっています。
- 両者ともフロントフォークキャスター角がエンジンのベースとなった車両に酷似している。Z1000 24度、 ZX-9R(F)24度、Xanthus 24度、ZXR400(L) 23.5度。
- シート高がエンジンベースとなった車両よりも高い。Z1000 820mm、ZX-9R(F)815mm、Xanthus 775mm、ZXR400(L)760mm。 普通は、シート高はネイキッドにするためには、利便性を考えると低くするものですが、逆に、この2機種については高くなっています。特にXanthusの15mm高はかなり高くしています。
- ホイールサイズ、タイヤサイズ、ブレーキディスクのサイズがエンジンベース車両とほぼ同じ。単純に似たような、シャシーディメンジョン、パワー、車重なので似るのは当然かもしれません。
- エンジントランスミッション減速比。2車とも一次減速(つまり、クランクシャフトとトランスミッションインプットシャフトへの減速)トランスミッション各ギヤの減速比は全く同じです。違うのは二次減速(つまり、フロントスプロケットとリヤスプロケットの間の減速)だけで、いずれもリヤスプロケットを1歯増やすことで減速比を上げています。これはその目的に合わせたトランスミッション比にしたら良いのでしょうが、スーパースポーツ系のエンジンはもともとギリギリで造ってあるので、ミッション類の変更はクランクケース変更を伴ってしまいますので、非常なコスト高になります。よって調整しやすい二次減速だけで対応するほうがやりやすいということになります。ちなみにこのやり方はヤマハのFZS1000/YZF-R1の場合でも一緒です。
- エンジン特性が加速重視型。5.で挙げたスプロケット歯数も、効きますが、Xanthusは当初”音速伝説”(!)とのキャッチフレーズで、マッハの再来といわれ加速性能を売りにしていました。まだ乗っていないのでなんとも言えないのですが、Z1000も雑誌のレビューを見る限り、トルク型というよりかなり加速型なようです。
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Z1000の同じような方向からの写真。雰囲気は似てますね。 |
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ということで、ここまでお読みいただけると、Kawasakiのスーパーネイキッドへの”定義”が判ってくるかと思います。つまり、
- ストリートファイター然とした、シャープな外観。マフラーの造形はデザインの重要なポイントとしてこだわる。
- エンジンはスーパースポーツ車のものを用い、加速型にセットアップする。
- シャシーディメンジョンはエンジンベース車両のものを、かなりの部分踏襲し、ベース車両に準じたハンドリングの特性とする。
- シート高を高くする。恐らく跳ね上がったテールまわりのスタイリングつくりと、フロントリフトアップ(要するにウイリーですね)を防止させる目的があると思います。加えてベース車両に比べて、Z1000、Xanthusともに若干重いですが、これもリフトアップ対策の一つだと思います。(もちろん一般的にネイキッドの方がスーパースポーツより割安の設定にするので、あまりコストをかけられないということも無いとは言えませんが・・)
ということではないでしょうか?
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非常に特徴的なXanthusのフレ-ム |
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では、他社のバイクではどうでしょう?一番近いコンセプトを持つヤマハのFZS1000とエンジンベースとなったYZF-R1の関係を見てみましょう。右の比較表をご覧下さい。まずは最高出力でFZS1000がネイキッドバイク最強と言われている部分です。143psもあります。
ですが、一方でかなり寝ているキャスター角、長いホイールベースに気づかれると思います。またシート高はまったく同じです。
これらから読み解きますと、FZS1000で重視したのはエンジンパワーで、これを保つために、ホイールベースを伸ばし、キャスターを寝かし、フロントリフトアップを防ぐとともに、安定感のあるハンドリングを造りだした、ということになります。このように考えますと、大分コンセプトが違うのがお分かりになると思います。
逆に、Z1000はシャシー周りが非常に過激です。ショートホイールベース等を生かすために最高出力を若干犠牲にしたのでしょう。結果として両者ともかなり過激ですが、方向性が違うのです。むしろ、ピークまでエンジンを回す、レース的な乗り方をネイキッドバイクでは普通しないため、ここは実用的なまとめかたといえます。
ここからは、ちょっと深読みですが、FZS1000はヨーロッパの一部の国で販売が苦戦している節があり、これはパワーがカタログ上ありすぎるため、自動車保険料がすごく高かったことによるものだった、と聞いたことがあります。ヨーロッパで600ccクラススーパースポーツが全盛になっているのはこのような背景があります。Kawasakiとしては、保険料に直接響くカタログ上のパワーを追わず、別の過激さで勝負したのかもしれません。あくまでも想像ですけど。 |
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YZF-R1 |
FZS1000 |
最高出力 |
152PS@10500rpm |
143PS@10000rpm |
最大トルク |
10.9kg-m@8500rpm |
10.8kg-m@7500rpm |
車重 |
174kg |
208kg |
ホイールベース |
1395mm |
1450mm |
キャスター/トレール |
24度/103mm |
26度/104mm |
シート高 |
820mm |
820mm |
タイヤサイズ 前 |
120/70-17 |
120/70-17 |
タイヤサイズ 後 |
190/50-17 |
180/55-17 |
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